トレチノイン治療

しみ、小じわ、にきびなどに効果的な新しい治療法です。

はじめに

トレチノインとは トレチノインは米国では、しわ、にきびの治療医薬品として、FDAに認可されており、非常に多くの患者さんに皮膚の若返り薬として使用されています。

日本では認可されておりませんが、本院では米国の製品にさらに改良を加えたものを処方しております。 

トレチノイン外用によるしみ治療は、原則的に患者さんご自身により、軟膏を塗布するという方式を取っていますので、患者さんがこの治療をよく理解されているということが重要です。 

トレチノイン軟膏を手にされた患者さんがトレチノイン治療を実践される際の手助けとなれば幸いです。

トレチノインの皮膚への作用

古い角質をはがれやすくして、皮膚の新陳代謝をよくする

表皮細胞の分裂を促進して皮膚の再生能力を高め、傷を早くきれいに治す

皮脂腺(毛穴にある皮脂を出す器官)の働きを抑える

真皮のコラーゲンやエラスチンの生成を促し、肌にハリをもたせる

ヒアルロン酸の分泌促進により、肌にうるおいをもたせる

トレチノインによるシミ治療

トレチノインによるしみ治療の原理  表皮の細胞は表皮の一番深い層(基底層といいます)で生まれてから、徐々に表面に押し上げられてきて、やがて角質となり、最後は垢となって皮膚からはがれていきます。

この表皮の細胞の一生のサイクルを皮膚のターンオーバーと呼び、約4週間かかることが知られています。

大多数のしみは、表皮の一番深い層(基底層)周辺にメラニン色素が沈着しています。

この層にはメラノサイトと呼ばれるメラニンを作る細胞があります。  

トレチノインは、表皮の深い層にあるメラニン色素を外に出してしまう働きを持っています。

トレチノインは表皮の細胞を活発に増殖させるために、表皮の細胞はどんどん押し上げられていき、そのときにメラニン色素を一緒に持って上がっていき、2ないし4週間でメラニン色素を外に出してしまいます。

これがトレチノインの特長です。

本治療では、この期間ずっと、強い漂白剤であるハイドロキノン(ハイドロキノン)を作用させて、メラノサイトに新しいメラニンを作らせなくしておきます。

そうすると結果的に、表皮はメラニン色素の少ない、きれいな新しい皮膚に置き換えられることになります。

本治療に使われる主な薬剤

トレチノイン軟膏(黄色)0.1、0.2、0.4% トレチノイン軟膏(黄色)0.1、0.2、0.4%  皮膚の活性剤。
表皮細胞の増殖を刺激し、メラニン色素の多い皮膚を垢として押し出す。
レチノイン酸の刺激に伴う接触性皮膚炎により治療中の皮膚は赤くなる。
また、皮脂腺の働きを抑えるため、初期には肌が乾燥する。
(これらの作用は、治療開始後1~2ヶ月して肌がトレチノインに慣れてくると、徐々に治まります。)
ハイドロキノン乳酸
プラスチベース(白)
ハイドロキノンはメラニン細胞におけるメラニン産生を抑制する。
内服シナール(ビタミンC)、ユベラ(ビタミンE)、トランサミン(止血剤)
これらはいずれもしみ治療に効果が認められている薬品です。
保湿剤ヒルドイドソフト、ヒアルロン酸など
日焼け止め化粧品紫外線散乱剤

顔のシミ

顔のしみの分類  顔にあるしみは、ときによって3種類ぐらいのものが混ざっていることがあります。

医師の診断によってこれから治療を行なおうとしているしみが、どの分類に属するのかをはっきりさせた上で治療をはじめましょう。 以下は、顔のしみの代表的なものです。 

◆ほくろ…0.5mmくらいから3mmくらいの大きさが多いです。 黒いものと茶色のものがあります。

色素性母斑…生まれつき存在する黒色のあざ。 

肝斑…ほほ骨の上や、額やエラの上に、左右対称に広がる、 ぺったりとした薄茶色のしみ。 

そばかす…両頬や鼻の上に茶色の小さい斑点がたくさん散在するもの。 

扁平母斑…生まれつき、もしくは思春期に発生する。 薄い茶色からかなり濃いものまであり、黒い毛を伴うものもある。 

老人性色素斑…30歳代以降、加齢にしたがって出現してくる。比較的濃い茶色を呈し、輪郭ははっきりしている平たいしみ。最もよく見られるしみです。 

老人性ゆうぜい…加齢に伴い現れるいぼ。茶色からこげ茶色をしており盛り上がっている。脂漏性角化症とも言う。

炎症性色素沈着…キズ、やけど、にきびなどの炎症の後にできる色素沈着。 

後天性真皮メラノサイトーシス…20代頃から両頬やコメカミなどに出現することが多く、肝斑と間違われることが多い茶色~灰色のアザ。遅発性太田母斑とも呼ばれる。


■トレチノイン軟膏が有効なしみと、あまり有効でないしみ

*比較的短期間によく取れるもの…老人性色素斑、炎症後色素沈着など

*薄くはなるが、完全にとれないもの…そばかす、肝斑、扁平母斑、茶色いほくろなど

*取れないもの…黒いほくろ、色素性母斑、老人性ゆうぜい、後天性真皮メラノサイトーシス。これらにはまず他の治療法が選択されます。 

治療期間

通常のしみは約2ヶ月です。肝斑や扁平母斑の場合は治療期間がこれよりも長くなります。その後も、ハイドロキノンなどの漂白剤でメインテナンスをすることをおすすめします。 

基本的なプロトコール

顔のしみ治療の基本となるプロトコールです。 まずは以下の方法 で治療を開始しましょう。

1)洗顔後、ビタミンCローションを顔全体に塗ります。普段お使いの化粧水は、ノンオイル、ノンアルコールで低刺激のものであれば、使っても結構です。

2)トレチノインゲル(黄色いゲル)を薄く塗り、乾かします(2-5分)。   

しみの種類による塗り方の違い

A)老人性色素斑、
炎症性色素沈着、
そばかす
はじめは1日2回(朝、晩)ご使用ください。
赤みが強くなってきたら夜のみ1回お使いください(担当医の指示に従ってください)。
境界がはっきりしているときは、なるべくしみからはみ出さないようにしてください。
そばかすに対しては綿棒で丁寧に塗ってください。
B)肝斑1日1回(晩のみ)ご使用ください。肝斑では広い範囲を治療することになりますので、
1回に塗る量はできるだけ抑え、よくのばして塗ってください。

3)医師の指示がある場合は、必要に応じて保湿液を使います。

4)ハイドロキノン乳酸軟膏(半透明色の軟膏)を塗ります。これは、はみ出して塗ってください。ハイドロキノンは必ず朝、夜2回使いましょう。

5)朝は、日焼け止めクリームもしくはUVカット入りの化粧下地 クリームを塗ります。朝は最後に、パウダーファンデーション (UVカット入り)を使います。 以上の塗り方は、治療開始時の使い方です。 治療が進むにつれ、薬の内容、塗り方等が多少変わってきます。 担当医の指示に従ってください。

【シミ・にきび治療に共通の注意事項】へ続く

手のシミ

手のしみ治療は、顔のしみ治療と原則的に同じですが、顔のしみよりもはるかに難しくなります。

手の治療を希望される患者さんで、顔にもしみがある場合は、顔のしみを先に治療して、トレチノインの治療に慣れてから手に挑戦することをお勧めします。 液体窒素処置が有効な場合もあります。


-手のしみ治療が難しい理由-

1)家事などで薬の成分が奪われやすい

2)皮膚の性質として、トレチノインに対する反応が鈍い場所である。
*そのうえ、反応が容易に強くなりすぎる(治療に適した反応に調節するのが難しい)。

3)皮膚の再生がおそい。

手のしみ治療にあたっての注意 顔の場合以上に、保湿ケアを十分行なってください。

可能なときは、綿の手袋などをつけることをお勧めします。手にも、日焼け止め、ファンデーションなどで遮光を忘れないでください。

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トレチノインによるにきび治療

トレチノインによるにきび治療の原理 にきびは皮脂線の機能が亢進するとともに、毛孔の入り口に角質が異常に厚くなり蓋をすることにより起こります。

トレチノインは、皮膚の皮脂腺を萎縮させ、皮脂腺の機能を低下させるとともに、毛穴に蓋をしている角質をはがれやすくすることによって、にきびを治していきます。

トレチノインを始めとするレチノイド(ビタミンAの誘導体の総称)は非常に有効なにきび治療薬として、欧米ではにきび治療の第一選択薬となっています。


にきび治療の基本プロトコール 医師の指示により、1日2回朝と夜、もしくは1日1回夜に、使用する。


1)洗顔する。

2)ビタミンCローションを塗布する。

3)トレチノインを患部に薄く塗布する。

4)指示がある場合は、抗生剤ジェル(ダラシンTゲルなど)を塗布する。

5)必要により保湿液を使用する。

6)朝は必ず日焼け止めクリームを使用する。化粧は行なってもかまわない。


以上の塗り方は、治療開始時の使い方です。 治療が進むにつれ、薬の内容、塗り方等が多少変わってきます。

*医師の指示により必要に応じて、ビタミン剤や抗生物質の内服を並行して行ないます。

にきび治療の注意事項

1.一般的な注意

*薬は必ず冷蔵庫に保存してください。特にトレチノインは分解が早いので 2ケ月毎に新しいものの処方を受けてください。

*トレチノインに対する感受性は顔の部分によって差があります。

効きやすい個所…口のまわり、目のまわり(周囲につけただけでも反応が起こることがある)。
効きにくい個所…Tゾーン(高濃度を必要とすることもある)

*トレチノインに対する感受性は個人差があります。
ご家族やご友人などに無断で使用させると、思わぬ反応が出ることがあります。

*処方された内服薬は食事とは関係なく、規則的に服用するようにして下さい。

*他の乳液、ローション(油性成分を含むもの)などは原則的に治療部位には使わないようにしてください。どうしても使用したいものがある場合は担当医にご相談ください。


2.これから赤ちゃんを作る予定のある方へ

トレチノインは、動物実験では大量投与によって奇形を生ずることが知られています。ヒトでは、トレチノイン外用との因果関係が明らかな奇形発生はこれまでありません。しかし、トレチノイン治療中は避妊を行なってください。


3.皮膚がむけ、赤くなってきたら(治療開始 2、3日後)

この治療をはじめてから、通常、1日は何事も起こりません。ところが 2、3日ほどたつと、塗ったところとその周辺の皮膚がポロポロとむけ、赤くなってきます。顔を洗うときも、ヒリヒリすることがあります。この反応は、トレチノイン治療には必ず伴う反応です。また、本治療を中止すれば、徐々に回復します。皮は無理にむかず、自然にはがれるのを待ってください。このように皮膚がむけ始めましたら、次のことに注意してください。


1)保湿ケア

トレチノイン治療中は、皮膚の角質層がはがれますので、皮膚のバリアー機能や水分保持機能がなくなっています。治療部位では水分がどんどん蒸発して、皮膚が乾いて、突っ張ったりします。また、バリアー機能がないため、いろんな刺激や外敵から皮膚を守るために皮膚を保護する必要があります。担当医の指示に従い、保湿液やオイルなどで適切なスキンケアを行ってください。


2)紫外線のケア

トレチノイン使用中は、紫外線の影響を非常に受けやすい状態になっています。従って、紫外線のケアが悪いとかえってしみを呼ぶことになってしまいます。担当医の指示に従い、適切な紫外線ケアをしましょう。刺激の少ないサンスクリーンや遮光用ファンデーションなどを使用します。特に汗をかく季節には紫外線ケアがおろそかになりますので、日中は頻繁に気を配るようにしてください。


4.治療を中断したほうがよい症状

以下の症状が出た場合には、トレチノインのみを中止して、 早めに担当医にご相談ください。

*痛みが強すぎる。
*所々血がにじんでいる。浸出液が出る。
*数箇所ひどくしみるところがある。
*赤くなりすぎる。 赤みコントロールの目安 パウダーファンデーションをしっかり塗ったときに、頬紅程度になるぐらいが良い状態です。

その他、不安があるようでしたら、いったんトレチノインのみを中止して次回の診察のときにご相談ください。 緊急には、お電話などでの相談もお引き受けしています。


5.1週間使ってもまったく赤くならない場合

濃度が肌質に合っていない可能性があります。 はやめに担当医にご相談ください。 

おわりに

トレチノインは、しみのほかに、にきび・小じわに対しても非常に良く効く薬ですが、どうしても炎症を伴ってしまうために、不安を感じられる方が非常に多いようです。

「診察までに日はあるのに、赤くなってきてこのままでは不安だ………」という患者さんのために少しでも役に立てればと思い、この冊子を作ってみました。

この冊子に対するご意見やアドバイスがあれば歓迎いたしますので、ぜひお知らせください。